池辺晋一郎芸術監督
姫路との縁も、30数年になりました。1989年、市制100周年を記念して「交響詩ひめじ」を作曲したのがはじまりです。以来、この曲を課題曲とする合唱コンクールが毎年つづけられてきました。同様に市制のアニヴァーサリーに関わる曲を全国何カ所かで作曲しましたが、このような活用はここ姫路市だけです。さらに、毎年の「姫路パルナソス音楽コンクール」や僕の企画「音楽をのぞいてみよう!」シリーズなど、姫路は極めて親しい場所になっています。
それゆえに想うのです―国宝にして世界遺産・姫路城、書写山圓教寺…この街の人たちは、歴史の深さをベースとする文学や美術、音楽など広範な文化に、また祭や季節の行事に、ごく自然に触れ、親しんでいます。したがってこの街の文化国際交流財団の仕事は、文化を「立ち上げる」のではなく、「さらに耕し、育てる」ことなのだと考えます。
文化国際交流財団の誕生は、前記市制100周年の時でした。この財団の芸術監督をお引き受けしている僕は、アクリエひめじ開館を機に書いたオペラ「千姫」を通してのみならず、文化の果実が豊かな香りを放ちつづけるこの街の「今」をまぶしく見つめ、そして「これから」の輝きを併せて信じています。